上手くてキレイな写真から、楽しくて気持ちのこもった写真へ













僕が初めて写真の仕事に関わった時は

業界全体がフィルムからデジタルに移行している
そんな時だったように思います

早くからデジタルを取り入れたとこもあれば
フィルムをまだ使ってる所もあって
僕もはじめはフィルムカメラでした



フィルム撮影はデジタルのように
撮ってその場では確認できないし


32ギガなどの大容量のメディアを使って
何百枚、何千枚と撮れるわけでもなく


常に残りの枚数を見て
次へのフィルム交換も気にしながら撮影



ISO感度も400か800が当たり前で
暗がりのスナップだと

シャッタースピードを1/30
時には1/15で切ることもありました



デジカメでシャッターを切ったとき
正直そのキレイさに驚き嬉しくなって
撮るのが楽しくなったことは覚えてて


でも撮り続けてるとそれが自分のチカラではなく
カメラのチカラだと実感して

時代と共にカメラの性能はどんどん良くなり
失敗は減ったけど
自分の意識で撮ってる感覚も減りました



2000万画素、3000万画素という
高画素が当たり前のカメラ業界で


正直 僕はそこまで
キレイさを求めてなければ連写もしないから
撮る上での性能向上や
機能の追加はもうこれ以上 必要なく

だからこそ例えデジタルであっても
フィルムで撮るような感覚を大切にしながら


それが僕の狙って撮るという上での
重要な土台となってます










デジタルカメラを触った頃は丁度
ウェディング・フォトの撮影に携わっていて

ネットや雑誌でたくさんの写真を見ては
日々いろいろ模倣してました


ウェディングという業界自体が
華やかさをウリにしていたこともあって

写真はどれも上手くてキレイなモノばかり


当時 撮るのが面白くなってきてたので

そんな雰囲気にのまれるかのように

僕も上手さやキレイさだけでなく
いつも同じような構図にならないよう

挙式や披露宴の中で別の角度から撮ってみたり


初めて撮る構図に一人喜んで
また違う構図を探して


当時、結婚式を撮り続けることが
一番の目標だというくらいの想いだったから

そんな自己満足な事ばかり繰り返してました



そしたらあるとき
ふと疑問が浮かんできました


「 何を撮りたいの? 」


写真や人という漠然としたモノではなく
人を撮るならどんな瞬間を撮りたいのか?
そう考えると


自分は今まで
結婚式という華やかさに煽られるかのように

上手くてキレイな写真を
撮らなければいけないと思い込んでたけど

本当は結婚式という空間で起こる人間模様

笑っていたり、うれしくて泣いていたり
そんな人の感情が動いている瞬間を
自分の意識で狙って撮りたいんだと



結婚する人たちは違うのに
どの式場に行っても進行は同じという

違和感のある写真を生産し続ける
自分に虚しさと嫌気を感じてたので


だったら結婚式にこだわらず
人にこだわればいいんだと気付くと
自然と視野が広がり


あれだけ好きだった結婚式の現場から
少しずつ足が遠のいていきました









せっかく独立して
一人こだわってやるんだから

生産性や効率性なんか気にしないで

自分がやりたいように
信じたスタイルで気持ちを込めてやろうと



だから、事前に顔合わせ(打ち合わせ)して
いろいろ他愛もないことしゃべって


撮影も編集もプリント作業もアルバム製作も
全部自分でやりたいと思って実践してます



キレイさや上手さを意識した撮り方をすると
自分らしさがどんどんなくなってくけど

楽しい写真を撮りたいと思ってると
自然といろいろアイデアが浮かんでくる



何より自分が楽しいと思えることを
手間暇かけてやると思い出深く残るんだと


だからこれからも
このスタイルでやり続けようと確信しました










とくおかじゅん エッセイ集





人を撮るということ





まず、会います






連写をしない理由






スタジオ撮影と出張撮影






カメラマンの色






自由な発想で残そう






写真に求めるモノ






自宅着付けのススメ






素朴な疑問






思い出は熱量







写真を撮るひと・とくおか じゅん

Copyright ⓒ Jun-Tokuoka All Rights Reserved